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寮に帰って、俺は荷物を持って部屋に入った。 部屋には誰も居なくて、俺は荷物を置いてから、部屋を出た。 『かめ。』 そう言われて俺は横を見ると、聖が立っていた。 『ただいま、聖。』 そう言うと聖は俺の側に来た。 『ねぇ、聖。』 『俺の部屋、来る??』 そう言われて俺は頷いた。 そして、俺は聖の部屋に入り、床に座った。 『言わなかった。』 俺はポツリとそう言った。 『智にも言えなかった。』 『そっか。』 そこから俺は、黙った。 しばらくすると、聖は息をついた。 『かめのリズムでいい。山下もかめが悪いやつじゃないって、最初から知ってると思うし。』 『うん。』 『それに、かめもまだ向き合いきれてない。』 そう言った聖の表情は、なんだか切なかった。 『なぁ、聖。』 『ん??』 『田口のこと、気にしてるのか??』 そう言うと聖は目を見開いた。 『違うって言ったら、嘘になる。』 『...。』 『でも、フラれたのは俺だから。』 そう言って聖は、辛そうに笑った。 俺は聖の肩をポンっと叩いた。 『大丈夫だと思うよ。』 『どこに居るかも分かんないのに??』 『...。』 俺が黙ると聖はハッとした。 『悪い。』 『いいよ。』 そう言って俺は立ち上がった。 そして振り向くこともなく、部屋を出た。 自分の部屋に入ると、仁が帰ってきていて、目が合った。 『さっき、ぴぃと会った。』 『そう。』 『あいつ、"和也"って呼んでた。』 『そりゃ、幼なじみだし。』 『じゃあ、仲直りしたのか??』 『多分な。』 そう言って俺は座った。 それから、俺は仁と話をした。 友達に戻った智の話を、ずっと。
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