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あれから数日が経ち、かずと話した通り、ぴぃはかずと仲直りしていた。
俺はひと安心して、日常を過ごしていた。
ぴぃも今まで通り、屋上で弁当を食べるようになったし、よく話すようになった。
その日の夜、ぴぃと一緒に部屋に帰ると、中から声が聞こえた。
それは、穏やかな声ではなくて、俺はぴぃて顔を合わせて、中に入った。
『だから、なんなんだよ。』
かずがそう問いかけた相手は、一番仲が良い聖だった。
『何してんだよ。』
俺はカバンを置いて近づいた。
『こいつが。』
かずは聖を指した。
『聖がどうしたんだよ。』
そう言うと聖は口を開いた。
『俺はただ、かめを心配してるだけだろ。』
『だから、それがなんなんだよって聞いてんの。』
『なにって。』
『俺はもうガキじゃねぇし。聖にそんな心配されるようなことない。』
『じゃあ、最近学校帰り、何処に行ってんだよ。』
そう言われてかずは黙った。
『都合の良いとこだけ、だんまりかよ。』
そう言われてかずは口を開いた。
『俺がすることも行く場所も、全部聖に言わなきゃいけないのかよ。』
『は??』
『人には、どうしても言えないことや言いづらいことだって、あんだろう。』
『だから??』
『聖がそんなんだから、田口は何も言わないで、聖の側から離れたんだよ。』
その瞬間、聖は目を見開いた。
かずはハッとした表情をしていて、同時に申し訳なさそう表情をした。
『かめに何が分かるんだよ。』
『...。』
『なぁ。』
そう言われてかずは、聖に近づいた。
『考えろよ。人の気持ちを。』
『は??』
『本当の気持ち、考えろよ。
今の聖は、重いんだよ。』
かずが言い切ると、聖がかずを殴った。
聖がかずのそばに行こうとしたのを、俺は止めた。
『聖、落ち着け。』
そう言うと聖は我に返って、かずを見た。
『かめ、俺。』
そう言って瞬間、かずは部屋を飛び出した。
聖はそれを見て、かずの後を追っていった。
そしてこの喧嘩から、俺は聖と田口という人のことを、知るようになった。
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