5077人が本棚に入れています
本棚に追加
「生まれた時から“西園寺グループの跡取り”という
それはそれは重い看板を背負っていらっしゃいました。」
「………」
私には、想像も出来ない事だけれどあの男なりに
苦労してきたのかもしれない…
「旦那さまは、本当に多忙の毎日を送られており、
大雅さまのご成長を側で見守るなどという、本来の父親らしいことは
何も出来なかったのでございます。」
「…お母様は?」
「はい。
奥様も同じように寂しさに悩まされ、大雅さまを身ごもられる少し前に
旦那さまの許可を頂かれ、御自身で会社を起業されました。
それからは、そちらの方に情熱を燃やされ、大雅様は本当にお寂しかった毎日の中で
お過ごしになられていたのでございます。」
「……そんな…」
初めて聞くあの男の過去。
両親に、愛情たっぷり注がれてワガママになったのとは
訳が違ったみたい…
きっと、愛されたいんだ…
愛情で包まれたいのに…それができないからケンカになっちゃうんだ…
「申し訳ございません。
少し、おしゃべりが過ぎた様でございます。」
「いえ、ありがとうございます。
教えてくださって…」
そう言うと、橘さんはやっと振り返って微笑んでくれた。
.
最初のコメントを投稿しよう!