第16話 "復讐代行者"の真実

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アパートを出た直後、遠夜の携帯が再び振動する。 今度はちゃんと電話の相手を確認し、遠夜は嫌々そうに少し顔を歪ませて、電話に出た。 「もしもし……何でしょうか……」 《遠夜……"何でしょうか"、じゃないよ。 どこにも出掛けないと思ってたのに……帰ってきたらいなくてビックリしたよ》 「ごめん、シノ……」 昴だけではなく、シノにまで心配をかけてしまったようだ。 おそらく千漓も遠夜を心配しているに違いないーーーはず。 せめてシノにだけでも「出掛ける」と言っておいた方がよかったのかもしれない。 《反省しているようだから、許すよ。 昴に聞いたんだけど、アパートにいるんだって?》 「あぁそうだよ。 本部にいて、昼寝しているだけに飽きたんだ。 ……アパートに来たのも、暇潰しだけど」 《だろうねー》 電話の向こうで、シノがあはははっと笑う声が、遠夜の耳に入ってくる。 さらに、千漓がシノを呼ぶ声までも聞こえた。 きっと"うるさい"とも思えるほどの大きな声で叫んだのだろう。 「なぁシノ、千漓が呼んでないか?」 《んー?呼んでるみたいだけど、ちょっと今は無視しようかな。 千漓の反応見るの、楽しいからね》 再びシノが楽しそうに笑う。 そんなシノにつられて、思わず遠夜も少しだけ笑った。 いつの間にか、遠夜の視界に明るいネオンの光が入りこんできたーーー大通りである。 だが大通りが見えたと同時に、"誰か"の 視線を感じて、遠夜は歩みを止めて振り返る。 「シノ、また……あとでな」 《……えっ?ちょっ……とお》 シノの呼ぶ声を無視して一方的に電話を切り、 暗い路地に向かって声を張り上げる。 「誰だよ。そこに隠れている奴は!」
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