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シノの電話が終わる頃には、遠夜はカツ丼定食をすべて平らげていた。
「今から仕事か?漣太」
千漓が伏せていた顔を上げて、シノに尋ねた。
「ん?まぁ仕事っていっても、ちょっとした書類の手伝い……ってところかな。
多分、すぐ終わる」
「そっか……ま、気をつけて行けよ」
頷いて返事をしたシノは、プレートを持って"食事受取場"へと向かって行った。
シノが食堂を出て行った頃、千漓もプレートを持って立ち上がる。
「千漓も仕事?」
「いや……俺は、"遊び"に行くんだよ」
「…………は……?」
遠夜は千漓の"遊ぶ"という発言に、思わず気の抜けたような返事をした。
だが、千漓はすぐに振り返って、遠夜をじっと見つめる。
「"遊ぶ"ってのは冗談だ。
……ごめん、遠夜……怖いから本気で睨むのやめろって!」
睨むのはやめた遠夜だが、その代わりに呆れたような長いため息をついた。
千漓はもう一度遠夜に謝り、「俺はな」と言う。
「これから、"代行者"の仕事なんだ。
遠い場所だから、今から行かないと、他の代行者に怒られるんだ……本当に」
少し怯えた様子で、遠夜から目を逸らす千漓。
もしかしたら、以前千漓に何かがあったのかもしれない。
千漓の様子を見て、遠夜はあえてそのことを聞くようなことはしなかった。
「じゃあ早く行けよ、千漓。
別に俺は"1人"でも平気だし」
「悪いな……遠夜」
千漓は複雑そうな表情を浮かべながら「行ってくるよ」と言い、遠夜から離れて行った。
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