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ブルブルと携帯が振動していることに気づいた遠夜は、少々寝ぼけながら、携帯の通話ボタンを押した。
「はい……もしもし……」
《一体どこにいるんだよ、遠夜》
電話の相手は口調からして、ずいぶん怒っているように思えた。
寝ぼけている遠夜は、声の主が誰だか分かっていない。
《遠夜、聞いてる?》
「大丈夫、聞いてるよ。
ってか……シノ?それとも昴?」
《……"琴岸昴"って言えば、遠夜には分かってもらえるかな?》
ここでようやく遠夜の頭ははっきりと目覚めて、相手が"昴"であることを理解した。
まず遠夜には、昴に言わなければならないことがあったーーー。
「ごめん……昴。寝ぼけてたよ……」
《だろうと思った。
大丈夫、そんなに気にしてないから。
ところで、遠夜どこにいるの?》
遠夜は昴に言われ、自分の周囲を見渡し、自分がどこにいるのかを確認した。
そして、"昼寝"をする前の記憶も思い出した。
「本部にいて暇だったから、アパートに行ってたんだ。
そしたら寝ちゃって……この時間になっていた訳だよ」
部屋にある掛け時計を見ると、時刻は午後5時半を過ぎているのが分かった。
電話の向こうでため息をするのが聞こえた。
《そこそこ暗いし、"代行者狩り"も流行ってるからさ……気をつけて帰って来なよ》
「分かった、今から帰るよ。
じゃあまたな、昴」
遠夜は自分から電話を切り、少し背伸びをして立ち上がった。
玄関まで行った遠夜は一度だけ振り返って部屋を見たあと、鍵をかけ、アパートから去って行った。
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