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人にはいずれにしても人生の分岐点と言うものがある。私はいつ頃だったろうか。
自覚するには二回あったと思う。
今となっては記憶も曖昧になってしまった幼少の時と引き取られた孤児院にいられなくなった時ってとこかしら。
(もし、)
もし。なんて言葉は嫌い。だったら、そうしていれば。そんなどうしようも無い妄想に近い空想を繰り返すのは非生産的で悔やむばかり。前に進もうとしない人間のする事
例えばついてしまった傷を前にもし避けていられれば。なんて馬鹿げてる。早く治療をすべきでしょう?
けれどそれでも、もし。を想像してしまう時があるのはきっと私の心が弱いせいなのかしら
(……)
「……」
(それにしてもだ)
今の私はかなり余裕があるらしい。状況は最悪。その上コンディションは立ち上がる事すら難しい。その割には考え事など、余裕の証だ。
(……)
実はあれなのかしら?私自身も知らない力があって追っ手も最悪の状況も最低なコンディションも吹き飛ばす様な秘策でもあったりするのか
(……)
「そんな訳無いか」
現実逃避はやめよう。先ほど無意味な事は嫌いだと宣言したばかりではないか。
それとも逆に今、肉体的にも精神的にも危機的局面にたたされた私が見せる走馬灯のように頭に走る記憶が思い出させるのか
「…ああ、痛い」
ぴりぴりと、至るとこが熱くなってきた。傷だらけの体を見てため息が溢れる
幼少の頃はよく兄達と駆けずりまわり怪我をして帰って母に怒られた記憶がふと思いだす
女の子なのだから大人しくしなさいとありきたりな小説にあるような怒られ方をされたものだ
怪我を作る意味では今と変わりは無いがこんな報復の対象として追いかけ回されるとは随分と昔からは想像もつかない未来になった物だと思う。
(もし、あの時)
無意味なもしを想像する。
(母さんが)
一度目の分岐の間もなく毎晩の様に想像した空想の未来。家族で仲良く食卓を囲み少ないおかずを取り合う暖かな家庭を夢みていた
馬鹿げてる、それでも想像してしまうのだ
(もし、母さんが私を売らなければ)
と、母さんが私を売らなければ私はこんな未来を歩まなかったのかしら、と
(でも仕方なかったものね)
貧しかった家に女はいらないもの。
遠巻きから小さな明かりと足音が聞こえてきた
ほらね、やっぱり空想は無意味なの、早く逃げればよかったと
無意味を重ねた
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