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暗い路地裏の為か辛うじて気配までは悟られていない。場所までは特定されてないのか足音だけが大きくなる。
今ならまだ逃げ切れるかも知れない
(逃げなきゃ)
体に力をいれようとする。けれど。近づいて来る足音が大きくなるにつれ逃げようとか隠れなきゃといった気力が削がれていくのがわかる。
(あ、なんか気持ちよくなってきた)
ごとり。支えていた体か地面に倒れこむ。付け加え体の痛みが無くなって来た。非常に不味い状態だ。もちろん身体の危機的の意味で。別に決してMの花が咲いた訳ではない。体の痛覚機能が麻痺して来たのだ。人間にとって痛覚は大事な機能でこれが無くなると言うことは危機能力が下がり。つまり何が言いたいかと言うと今の私は死の瀬戸際にたっている状態に近い。
改めて倒れこんだ辺りを注意して見ると血だまりが出来ていることに気付く。恐らくと仮定しなくてもわかる。
これ全部、私の血だ。
真っ赤に染まる石畳の地面
(うわー…)
想像していた傷の具合や流れた血の量が。現実を目の当たりに更に血の気が引いていく。
一気に体温も下がってすごく寒い。
(これ、本当に死んじゃうじゃない?)
きっと致死量ぎりぎりの血を流しているに違いない。もしかしたら越えているかも
(私、死んじゃうのかな?)
そろそろ体にも力が入らなくなって痛みが無い。指一本動かせない
(また、眠くなってきた)
こんなとこで一人寂しく。消えていくのかしら。まだ若いのに。やりたいことなんてなかったけど。このまま消えるのは嫌だな。死ぬことに怖いと感じたことは無いけれど自殺願望者でも無いわ。ただ生きていたいの。だから私は。
声一つあげられない。悔しい、何も出来ない。昔と変わらないわ
『お前と言うやつは何をやらせてもこの程度も出来んかのぅ』
昔、じいに言われた言葉。重なる過去と今の自分の状況にふと思い出した言葉
(この程度)
いつもいつもいつも。
この程度と褒めてくれた試しがない。落ちかけた意識を現実と繋げたこともあって痛覚が機能し全身に痛みが走しる
(ふざけるんじゃないわ)
体の関節が痛い。傷が痛い。半端なく。針で刺したとか生ぬく骨の芯から軋む様に。それでも立ち上がろうと腕に力を入れる。がたがたと震え傷口から血が新しく流れ。立ち上がる足からも一筋の血が流れる。痛みに耐え強く奥歯を食い縛り立ち上がる。
「…いいえ、まだよ」
この程度で、まだ死ぬわけにはいかない
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