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「まなちゃん、早かったね。」
「高間さん、こんにちは。」
事務所へ入ると、高間さんが誰かと話していた。
あれは確か・・・。
「三朝さん、こんにちは。」
「湯原さん、こんにちは。」
湯原さんは事務所のちょっとお偉いさん(立場とかはよく知らない)。
私をシグマに入れてくださったのも、実は湯原さんだったりするのだ。
「とりあえず、座って。」
湯原さんに言われ、私は応接室のふかふかなソファに腰を埋めた。
私の隣に高間さん。正面に湯原さんが座る。
「それで、デビューが決まったと聞いたのですが。」
私が切り出すと、高間さんは逸る気持ちを抑えられないのか、体を乗り出して私の手を取った。
ちょ、高間さん指輪痛い!
「それがね、凄いんだよ!原作が大人気のラノベで、しかも準レギュラー!」
高間さん、唾飛ばさないで。
って、え?ラノベ?準レギュラー?マジですか?
「これなんだけど、知ってるかな?」
そういって湯原さんから差し出されたのは、今大人気のライトノベルで、私も大好きな作品だった。
どうしよう、このシリーズ全巻揃ってるんだけど!
「わかります!大ッ好きです、これ!」
多分今の私は目がギラギラしてるはず。
デビュー作が大好きな作品って全俺が泣くわ。
私の返事に満足したのか、湯原さんはニコニコしながら私のキャラクターについて話始めた。
ちなみに隣で高間さんがめっちゃヒートしてるけど私はスルースキルを発揮しています。
湯原さんの話を聞けば、私はヒロインのライバル役(この子も可愛いんだよねっ!)で、なかなかセリフも多い。
これは私、幸先良すぎる予感がするわ!
と、ふいに扉がノックされた。
「あ、来たかな。」
湯原さんがそう呟いて立ち上がる。他に誰か来る予定があったのかな。
ぼんやりそんなことを考えて、私は湯原さんが扉を開けにいくのを眺めていた。
「この作品の主人公役も、呼んでおいたんだ。」
言いながら、カチャリと小さな音がして、湯原さんが扉を開いた。
「あ・・・。」
「三朝さんは、会ったことなかったかな。中村悠一くん。」
扉を開いたら、本物のつるべおとし様がいらっしゃいました。
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