新人声優、デビュー

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再びスタジオに戻ると、中村さんは台本を取り出していた。 わ、私もやらなきゃ! 中村さんの邪魔にならないように鞄から台本を取り出す。 読み返しすぎてぐちゃぐちゃだな・・ひょ、表紙はずれたらどうしよう。 ちょっと不安に思いながら近場の椅子に座り、台本を開く。 線引きすぎた気がしないでもないな、これ・・。 それから読み始めようとした瞬間に、空気を吹き出す音がした。 え?今ブフッて、ブフッて言ったよね? 「アンタそれ・・ボロボロ過ぎるだろ!何、ゴキブリでも潰したの?」 「ゴ・・っ!違いますよ!沢山読み返したらこうなったんですっ!」 失礼な! つか、いつまで笑ってるのこの先輩。ちょ、笑いすぎ! ひたすらゲラゲラ笑い続ける中村さんはもう放っておいて(なんか腹立つから)、私は本読みに集中しようとした。 くっそう。あんなに笑わなくてもいいじゃないか。 と、またスタジオの扉を開く音がして、私は椅子から飛び上がった。 「おはようございまー・・あれ、中村早い。」 杉田さんでした。 ちょ、ま、顔合わせの時も話せなかったけど(中村さんとガンダム談義してたから)リアル銀色のサムライだぁぁぁぁあああっ! 「お、おはようございますっ、杉田さんっ!」 「え、あ、おはようございます。えっと・・・・ササミさんでしたっけ?」 「三朝です!」 あれ、デジャヴだぞ。 というか、そこの釣瓶落とし、また豪快に笑わないでください! 「あ、そうだ、三朝さん。おはようございます、三朝さん。」 杉田さん、天然で間違ったんですね。じゃあ仕方ないですね。あそこの釣瓶落とし先輩からは悪意を感じましたけど。 「中村、なんで早いの。」 「いや、なんとなく。」 わぁ・・・・本当に仲良し・・・・というか杉田さんは中村さん大好きなんだなぁ。 捨てられた子犬みたいな目をしている。 ん・・あれ?その手にしている某牛乳マークのコンビニ袋から覗くのは・・まさか! 「す、杉田さん、それって・・・・一番クジの・・。」 私の言葉に、杉田さんの瞳が輝く。こ、子どもだ・・。 「そう!初号機フィギュア限定版だよ!!三朝さんわかるの!?」 「わかりますともー!」 まさか、杉田さんとエヴァ談義できるなんてっ! 突き付けられた紫のフォルムに頬擦りをしたくなる。 やっぱり初号機ですよね! と、更に台本を閉じた中村さんまで寄ってくる。
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