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浜の集落。
夏は海水浴場があるのでその時期は賑わい、旅館等も立ち並ぶ通りがありました。
葬儀のお客様もいらっしゃるので、たまに配達や集金に回ったりもしていました。
更に遠い昔には…家族で海水浴に行ったり、弟と自転車で海に遊びに行ったり…1人でスケッチをしに海岸に行ったりしていました。
その町並みが、すっかり海に消えてしまいました。
家が流されたのではなく、家が建っていた土地ごと抉り取られたのです。
その事を思うと、泣けてきました。
暫くして、泥だらけになった父が部屋に帰ってきました。
「おばあちゃんは収容して貰った。お母さんも絶対に家に居るって探して貰ったけど…見付からなかった」
そして、手にしていたボストンバックを私に手渡しました。
「家の中に入ったらさ…お父さんのプロレスのDVDとか、お前の漫画とか、そんなもんは一杯残ってたんだ…だけどな、お母さんの物は何も残ってなかったんだ。お母さん趣味なかっただろ?だからかな、お母さんの物、何も無いんだよ…。だから、何か趣味でも持てって言ってたんだよ!なんで、楽しみも持たずに家族の為に家事ばっかやって……どっか行っちゃったんだろう…っ」
「……お母さん、言っちゃ悪いけど…馬鹿だよ!私達の為だけに生きてた人生みたいじゃん!今から楽しい事するんだったのに、何で何もしないで行っちゃうの…?」
父も私も嗚咽を隠す事なく大泣きしました。
同じ部屋の母と同年代の方が一緒に泣いて、私の肩を抱いてくれました。
この時が、一番泣いたと思います。
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