忍び寄る影

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手術直後家族から『悪い部分はもう全部取り除いたから大丈夫だよ!』と言われ、私は大粒の涙を流した。 術後、付け替えの為包帯を取り自分の胸を見て私はショックのあまり涙が零れた。 確かに再建手術を施してあったが乳房を一部切り取られ傷も遺り、胸も左右対象の形を保っていなかった… 自慢の乳房!というわけではなかったが私の女としての価値がなくなったような、『終わった女』だと烙印を押されたようなショックは想像以上だった。 しかし、もう過ぎてしまった事はクヨクヨ悩んでも仕方ない。 私は開き直ってその後の治療を受けた。 胸の傷も腫れが引いて放射線の治療が始まった。 僅かな時間照射される放射線は痛くも痒くもなかったが、回が進むに連れ私の胸は固く日に焼けたように黒く変色していった… 数ヶ月に渡り治療を受けた私を支えてくれたのはやはり家族だった。 ツラい治療に堪えられたのも家族のお陰だ。 心身共にボロボロになった私でも帰る場所がある! 大切にしてくれる人々がいる! 癌はとてつもないダメージを私に与えたが漫然と生きてきた私に生きることの難しさ、大切さを教えてくれた。 人間として欠けている部分を教える為の試練だったのかもしれない。 私は真剣に生きる決意をした! しばらくは癌の経過や転移も調べなくてはならないし、自宅療養をしなくてはならない。 社会復帰できるまではまだ時間が架かるが、新たな希望が湧いてきた…
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