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耳へ入った声を確認するように、私はその方向へ身体を向けた。
そこには栗色の髪が波の様に曲線を描く長髪、くすんだアメジストの瞳が一つ、片方には包帯。
それに茶色の肩掛けと言うみすぼらしくも気品のある、魔女と言われるには申し分のない少女がカウンターからこちらを覗いていた。
「あなたは生き残っていた方ですか?!よかった、やっぱり私以外にも」
『図書館へ入館するなら、さっさとノートへ記載をして下さいな』
何はともあれ、生きた人に会えた嬉しさに声をあげるも、少女の無愛想な言葉に私の言葉は掻き消された。更に、早くしろとでも言うようなノートをわざと指先で叩く仕種。
流石の様子に、何て人かしらと苛立ちを覚えるも、私は羽ペンにインクを付けると
“[レクイエム] フルール”
と乱雑にノートへ署名をした。
『はい、確かに。ありがとうございます。ようこそクラレス図書館へ。当図書館は、数ある本の中から来館された方にピッタリの本を見付けます』
署名を確認した少女は満足そうに、180度回転させた様な笑みを浮かべるとカウンターから出て来た。私は少女の姿を見て言葉を失う。
古い木製の車椅子の上にある少女の身体は、恐ろしい程色白で細く、茶色のシックなドレスから覗く足も病的な細さだった。
『おや、そんなに私の身体が気になりますか』
「いえ、そんな。ごめんなさい…。それより、私は本が目的ではなく…この眠った街で貴女の様な生きた方を探していて」
『ほう、そうですか』
戸惑う私に構う事無く、私へと愛想良く相槌をする少女。私は人の話しを聞いているのだろうか、と内心呟き口を閉ざした。
『表情の解りやすい方ですね。おやおや、そんな貴女にピッタリの本が此処にはございます』
『オルゴールが一曲終わり、閉館の鐘が鳴るまで、私の集めた一つの物語を聞きませんか』
車椅子を動かし、洋館に並ぶ無数の本棚から一冊手に取ると、少女は静かに本を開いた。
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