硝子匣のフルール

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図書館の少女が巨大な硝子のオルゴールのネジを巻き、悲しいレクイエムと共に物語を話し始めた。 ~昔々、最近か未来の話し。 眠りの国に一人の女の子が居ました。 その国は魔女の呪いで時間が止まり、生物は全て眠りに着きましたが たった一人だけ、呪いと共に眠りから覚めた少女が居ました。 少女が周りを見ても、国の人々は眠り続けたままで 一緒に異国を目指した愛しい人も、何もかもを失い そして、いつまでもいつまでも進まない時間に 少女は孤独に飲み込まれていきました。~ 何だか今の私に似ている、と耳を傾けると再び少女は曲と共に物語を話し始めた。 ~止まった街とは逆に、世界は静かに針が進みましたが 少女は街の時間に取り残され、変わらぬ歳を繰り返しながら 呪いをかけた魔女を探して歩き続けました。 そして、遂に魔女を見付けた少女は 呪いを解くように申し出ます。 『この街の呪いを解いて下さいな。私は独りは嫌なのです』 魔女は言いました。 『呪いを解いても構わないよ。ただ、お前はお前の真実を見る事になる』 孤独に押し潰された少女は、構いませんと魔女と約束をしました。 何があっても呪いは元に戻らない こうして、魔女は街にかけた呪いを解きました。 呪いを解いた街は、また元の様な活気を取り戻すも 魔女の所へ行った少女は、硝子匣の中の球体関節人形へと姿を変えました。~ 私は悍ましい物語に、その本を選んだ少女へ声をかけようとすると、回ったオルゴールがゆっくりと曲を止め、閉館の鐘が館内へ響き渡った。 「もう閉館なの?そんなに時間が経ったのかしら」 私は時の流れの速さに時計を見るも、身体は眠気と共に徐々に動かなくなっていった。 そして、最後には持っていた本が床へ落ち、私は硝子匣に囲まれ、コトンと床に眠りに落ちた。
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