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新品のスーツに慣れないヒールの靴を履いて電車に乗り込む。
瀬尾日菜は、1年留年をしたのち専門学校に通うことを決めた。
経済的な問題で、自分で学費を稼ぎながらの学生生活が始まる。
入試の時に夜間の専門学校だからか、年齢層が高く殆どの同級生が年上となる。
慣れないヒールとあいまって、足取りはどんどん重くなり、電車の中は家路に着く人で溢れていた。
(友達…できるのかな?)
思わずため息が出る。
学校に着き、昼間の大学生たちとすれ違う。
同じ敷地の学生たち、明るくはしゃぐ姿と、自分の薄暗さをどうしても比較してため息がまた出た。
講堂に着き、座席を探す。
その時1人の女性が話しかけてきた。
『名前なんていうの?私は城野内秋穂。』
『あっ…と、瀬尾日菜です。』
すると彼女はすぐに座席一覧を見て、日菜の座るべき場所を教える。
『私の次の次だね。よろしくね。』
『…よろしくお願いします。』
彼女独特の笑顔と親しみやすい口調、少し安心した。
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