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[ 妾は、そなたが好きじゃ。]
少女は、自らの想いを
少し頬を赤らめながら
青年に伝えた。
しかし青年は、少女を見ながら
気まずそうな表情をした。
[ 桜姫様、私と貴方様では
身分が違いすぎます。]
[わかっておる!
妾もそこまで馬鹿じゃない。]
少女は自嘲気味に笑うと、
青年はさらに困った顔をした。
[ほれ、朝顔!お主そろそろ
仕事の時間じゃろう!?
いったいった!!!]
少女は何事もなかったかのように振る舞い、青年は躊躇いながらもその場から立ち去った。
独りきりになった途端に
少女の笑顔は消えた。
[ ………わかっておる………。
冗談じゃ、じょうだ ]
瞳から、涙がぽろぽろと
落ちてくる。
何度拭っても、それは止まらず
湧き出てくるばかりだ。
[見られ、なくて、よかった、
…………こんな、顔……っ]
困らせたかったワケじゃない。
ただ、伝えたかっただけなのに。
伝えなくても、
伝えても苦しいなんて。
[………ぬ]
少女の鼻頭に桜の花びらが
ぴたりと落ちる。
[お主らも同じか…………
咲かなくても咲いても、
苦しい………、]
桜の花びらは、以前
ひらひらと落ちていく
[ならば、妾も散るかの……]
少女は、桜の花びらを追いかけるかのように橋から真っ逆さまに
落ちていく。
鴇色の着物を握り締め、
ひらひらと落ちていく。
[いってらっしゃいませ、
お姫様。 ]
誰かがぽつりといった。
その声は、笑っているようにも
泣いているようにも聞こえる。
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