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―バンッ
「…っ慶…どうしてだよ!!」
教室に昼間の熱気の籠る中、いつもの悪戯っぽい笑みも無く力一杯に教室の机を叩く。
「…俺は…辞めただけだ篠原、お前には関係無い…」
透き通るような肌に薄い色の細い目、真夏を越してきたにも関わらず、少しも日焼けの後が無い。
怒声に答えた男、松村慶は静かな冷たい声で篠原を突き放す。
「関係有るさ!! 俺は弓道部主将だぞ!! 副主将が急に辞めるなんて…」
「浩太、大人しくしてくれ。だが、理由はなんなんだ?納得できない。なぁ、城所。」
篠原を抑えながら細く背の高い男が口を挟む。
「石橋…」
「うん、2年男子はたった4人しか居ないんだ。困るじゃないか…」
もう一人の男、城所も何時もはふざけてばかりいるが真面目に返答する。
「………」
松村は黙り込む。
「…松村慶」
その時、教室のドアが開き、涼しい風が教室に舞い込んだ。低い声が松村を呼ぶ。
「…はい、今行きます。」
松村に声をかけた二人組はどちらも日焼けしていて半袖の制服から筋肉質な腕を覗かせている。
「3年生…あ…青軍副軍長の…」
「……早くしろ。」
副軍長、それは体育祭等の応援団のトップ団員を纏める役名だ。
学校創立以来の歴史を持ち上下関係に厳しく規律や秘密事も多い団体だった。
その副軍長といわれた男は整った仏頂面をそのままに松村を呼ぶ。
「お前らはさっさと帰れ。」
そう言ったのは2人組のもう片方の男だった。
「井口、放っておけ。」
松村は2人に駆け寄りそのまま出て行ってしまった。
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