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―コンコン―
ノックの音、石橋が静かに口を開く
「…誰だ?」
「……憂木野です…開けても良いですか?」
空気が緩む。
「ふぅっ、あぁ、良いぞ」
カラカラと戸が開き短髪の女の顔が覗く。
「…すいません、松村先輩の事で…」
「お前 何か知ってんのか!?」
篠原が憂木野に詰め寄る。
「…っ、いやあの…」
「なんなんだよ!!」
必死な篠原に憂木野はどもってしまう。
「篠原落ち着けって。憂木野、話してくれよ」
「あ、はい」
石橋の言葉に憂木野は少しずつ話しだす。
「昨日の放課後、松村先輩を見たんです」
「放課後…(あの後だな)」
「私、病院の日で…部活休んでて、それで病院に行く途中に松村先輩を見て…」
憂木野の顔が暗くなる
「…あの時の先輩、何かおかしかった。」
「おかしい?」
「はい、いつもの雰囲気じゃないっていうか…」
「雰囲気ね…」
「それに、あの…青軍の団員の方達といらっしゃって…」
「「「!!」」」
三人の顔色が変わる
「人通りのほとんど無い場所で黒塗りのワゴンに乗り込んで…」
「…怪しすぎるな」
「憂木野!!誰と居たかはっきり解るか!?」
「あ、えっと…下平副軍長さんと…」
「…井口さんか?」
「あ、そうです。…それから、車の助手席に高尾軍長さんが見えました。黒塗りの窓を少し開けて下平さんに指示を…」
「あの野郎!!どういう事だ!?」
「高校生が高校生を誘拐してどうなるんだろ…」
「有り得なくは無いがちょっと無理があるな」
「でも何なんだよ!!青軍の幹部が束になって松村を…意味わかんねぇよ!!」
「…松村先輩…いつもの強い空気を纏ってなかった…」
憂木野の声が震えている
「空気…?」
「絶対におかしいんです松村先輩があんな…っ…」
「あんなって…なんだよ…」
「唇を噛み締めて…いつもの余裕も全く無くて…っただ、悲しそうに…」
「…松村…」
「あの口元…」
「え?」
憂木野が篠原を強い目で見る
「『篠原』って言ってました」
「…は…?」
「苦しそうに震えながら『篠原』って呟いてたっ…」
憂木野が座りこむ
「松村先輩が…っあんなに苦しそうに先輩を呼んでたんです!!」
「松村が俺を…」
篠原は困惑した表情を見せる
「先輩が呟いた時 高尾軍長がうっすら笑ってました…」
「…え」
「怖い笑みでした…」
部室はまた暗い静寂に包まれた
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