25人が本棚に入れています
本棚に追加
*プロローグ*
僕は、高い所が好きだ。
だから今現在、人気の無い橋の上に立っている。
◇ ◇ ◇
三月某日。
例年通りと行かず、まだまだ寒い日々は続いていた。
高校の制服の上にコートを着て、首にはマフラー。手には手袋。ポケットにはカイロを二つ忍ばせた僕。実は、結構な寒がりだったりする。
そんな僕は帰り道を歩いていて、急に高い所に立ちたくなった。
そして、恐ろしいほど人気のない橋の上から、夕陽で眩しいオレンジ色の光を照り返す川を見下ろしている。
高い所にいれば、寒さなんて関係ない。寒いのは嫌いだけど、高い所の空気は澄んでいる気がして好きだ。
まるで、自分が洗われているような気がするから。
こんな僕は、端から見れば自殺志願者に見えるだろう。
だが、残念。僕は自殺志願者等では無かった。
「まぁ、でも本当に生きてるのか分からないよな……」
橋から川を見下げたまま、僕は痛い独り言を呟く。
高い所から世界を見る度、僕は思うのだ。
あぁ、僕は何て小さいんだろう……と。
本当に生きているのか、不思議になる瞬間がある。
「僕は本当に生きてるんだろうか?」
思わず、そう呟いた時――
ドンッと、背中を押された。
最初のコメントを投稿しよう!