第一回お題『ヒーロー』

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             *プロローグ*  僕は、高い所が好きだ。  だから今現在、人気の無い橋の上に立っている。             ◇ ◇ ◇   三月某日。  例年通りと行かず、まだまだ寒い日々は続いていた。  高校の制服の上にコートを着て、首にはマフラー。手には手袋。ポケットにはカイロを二つ忍ばせた僕。実は、結構な寒がりだったりする。  そんな僕は帰り道を歩いていて、急に高い所に立ちたくなった。  そして、恐ろしいほど人気のない橋の上から、夕陽で眩しいオレンジ色の光を照り返す川を見下ろしている。  高い所にいれば、寒さなんて関係ない。寒いのは嫌いだけど、高い所の空気は澄んでいる気がして好きだ。  まるで、自分が洗われているような気がするから。  こんな僕は、端から見れば自殺志願者に見えるだろう。  だが、残念。僕は自殺志願者等では無かった。 「まぁ、でも本当に生きてるのか分からないよな……」  橋から川を見下げたまま、僕は痛い独り言を呟く。  高い所から世界を見る度、僕は思うのだ。  あぁ、僕は何て小さいんだろう……と。  本当に生きているのか、不思議になる瞬間がある。 「僕は本当に生きてるんだろうか?」  思わず、そう呟いた時――  ドンッと、背中を押された。  
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