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「あぁ、ぅん・・・、はぁ・・・、ん、ぁっ・・・くぅ」
チアキはその快楽に悦楽していた。
俺はただ坦々と作業のように続けた。
やがて、チアキはその先を求めた。当然だ。
当たり前で、自然なことで、いつも通りだった。
俺は交わるために身体を寄せる。そこで、ふと躊躇った。
また“いつも通り”に続けていいのか、と。
いつものように快楽に身を任せるだけでいいのか、と。
何も変わらず、何も変えずに、怠惰に生きていいのか、と。
チアキを見る。
きっとこいつは、ここでやめても何も言わないだろう。落胆することも、憤慨することもないだろう。
こいつはいつも俺に合わせる。いつだって、どんな時だって。それがこいつで、こいつだからこそだ。
止めるべきか、已めないべきか。
変わるべきか、代わらぬべきか。
生きるべきか、逝きないべきか。
決断は時間が経てば経つほど、鈍っていく。
時間というのは厄介なものだ。不変な時間などなく、代わり続け、其れで尚且つ有限だ。
しかし、人類にとっては必要不可欠な概念だ。もしも時間という概念がなければ、誰も俺のように生きるだろう。
閑話休題。
結局、俺は流される。
決意なんて、そんなものだ。覚悟なんて、そんなものだ。
ましてや、今思い立った気持ちなど些細なことでしかない。
俺は流される、否、流れる。
流れに流されるままに身を任せる。
やがて、辿り着くのは海原だ。快楽と悦楽の海だ。
俺はこれからも生き続ける。
無為に、無駄に、無意味に、ただ只管に。
当たり前の世界を、変わらない世界を、いつも通りの世界を──逝き続ける。
THE END
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