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意識が覚醒する。
いつものように起きる。
繰り返してきた日常は、今日も変わらないままだ。
窓から覗く空を仰ぐ見る。
太陽は燦々とコンクリートに包まれた街を照らしていた。
どっからどうみても、昼は過ぎている。
まぁ、気にすることはない。これもいつものことだ。
季節は夏。
狭いボロアパートの一室は、夜とは別世界のように暑い。
悲しきかな、それが俺の住む部屋だった。
けれど、ここに住むのは俺だけじゃない。
もう一人、俺の恋人が住んでいる。
ていうか、隣で寝てる。
俺達が出会ったのは大学時代。なんてことのない出会いだ。
たまたまクラスが一緒で、たまたま同じ授業をとって、たまたま気が合っただけだ。
普通のどこにでもありそうな、どうでもいい出会い。それが俺とこいつの馴れ初めだ。
俺は部屋の蒸し暑さから解放されるべく、布団から転がるようにして窓を全開にした。
多少、風が入ってきたが涼しいとは言い難い。しかし、汗の滲んだシャツに風があたりそれだけは涼しく思えた。
すこしだけ生き返った想いをした後、上体を起きあげた。
まだチアキは寝ている。
よくこれだけ暑いのに寝ていられると、心底感心した。
もとよりこいつはこういう奴だが・・・。
俺、いや俺達は大学を卒業した後、無事就職を果たした。
勤めた企業は、名前すら聞いたこともない中小企業。チアキも似たような会社だった。
本来ならば、今頃会社でキーボードを叩いていたはずだ。
けれど、俺は会社を辞めた。自ら辞表を提出した。
勤めてたったの二か月。
周囲からは、根性なしと罵られたが言い訳させてもらえるならば上司が悪かった。
俺の上司、教育係というべきか。その人は見た目、狸のような人間で中身も同様に狸だった。
ただそれだけだ。具体例を挙げればキリがない。もとから、働く意欲に溢れていたわけでもないし、後悔はしていない。
ただ、驚くことにチアキも俺を追うように会社を辞めた。
自ら辞表を叩き出して、だ。なにか訳があったわけでもなく、俺が辞めたから辞めたらしい。
正気とは思えなかったね。前から、変な奴だとは思い続けてきたけどここまで異質だと逆に愛着が湧く。
そんな理由で俺はこいつとの関係を続けている。
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