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来訪するのは虚無感。虚脱感。いやいや、虚なんてありはしない。
無感に脱感。空腹に似た、欲求。食べても食べても無くなって、脱げていく。
この世界は酷く退屈だ。なにもない。なんでもあるから、なにもない。いらないものしかない。
不要なもので溢れて。必要なものなど、どこを見てもありはしない。圧倒的なまでに、絶倒的なまでにない。
足りていない。世界において必要なものが足りない。ない、ない、ない。なにひとつ、肝心なものが、抜けている。
この世界には不思議が無い。怪異が脱走したかのようだ。テレビを見れば溢れている不思議が無い。怪異がいない。変化が無い。個性が無い。物語が無い。
超能力者も、幽霊も、妖怪も、魔法使いも、魔術師も、魔導師も、吸血鬼も、天使も、悪魔も、英雄も、聖女も、神も、宇宙人も、異世界人も、なにもかもがいない。
世界におけるファクターがない。普通しかない。日常しかない。それはつまり、なにもない。
だから私はアクションを起こす。なにもない。なにもおきないこの世界で、たった一人の反抗だ。反逆だ。反乱だ。
私が、私だけが、この世界におけるキャラクターなのであるならば。それによって変わるかもしれない。動き出すかもしれない。
私の世界が。私の物語が。私の全てが。───もし、変わらず、動かず、騒ぎもしないなら。それでも始まらないなら・・・。
始まらないなら・・・?始まらなければ、どうだというのだ。始まらないなら、私はただ死ぬより先に、消えるだけ。それだけだ。
私の視界が電車を捉えた。
脱線するまで、あと二秒・・・。
それでは皆さん、さようなら──
the end
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