はじまらない

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私は人を殺そうと思う。 沢山の人を殺そうと思う。 大勢の人間を殺そうと思う。 たった一人の私が・・・、不特定多数の人間を殺そうと思う。 凶器なんてない。凶器なんていらない。狂気なんてない。狂気なんていらない。 人を殺すのに凶器も狂気も必要ない。必要なのはやる気だけだ。 周囲に居る人間を殺すのなんて容易なことだ。やり方なんて、方法なんて、様式なんていくらでも思いつく。 例えば、そう。相手が友人なら「目を瞑れ」とお願いして、道路に突き出せばいい。相手が家族なら就寝中に火を放てばいい。 相手が他人なら・・・?相手が会った事も見た事もない他人ならば・・・?さて、どう殺す? すれ違った時にナイフで刺すか?いや・・・、それでは凶器が必要だ。 車で轢き殺すか?いや・・・、それでは狂気が必要だ。 自分の手を汚すのは論外だ。とてもじゃないが上手いやり方とはいえない。 なにより大勢を殺すとなれば、数える間もなく疲れてしまう。狂ってしまう。 それではダメだ。それではイヤだ。それではイケナイ。 私は、私のまま、私そのもので殺したいのだ。壊れず、狂わず、歪まずに。 だから考えた。──考える必要はなかった。 そのようなもの、考えるまでもなく、私は知っている。 数多ある選択肢の一つとして私は選択した。
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