0人が本棚に入れています
本棚に追加
電車というモノがある。乗り物だ。沢山の、大勢の人間を運搬する乗り物だ。日と時間で乗客数が増減する乗り物だ。
特に朝、そして夕方。その時刻の電車ははちきれんばかりに人が乗る。まるで物資のように。家畜のように。空気のように。
パンパンに詰められた人間を運ぶ乗り物。早く、速く、脆い。レールの上しか走れない。進めない。滑稽な乗り物。
それを、もしも、レールの上から解放したならば・・・。パンパンに膨らんだ風船が割れるように、弾けるように。人が死ぬ。
一両でもレールから外してしまえば、他の両も連鎖するように次々と倒れ、弾け割れる。そう、例えるならぷよぷよのように。
またはボンバーマンのように・・・。そうボンバーマンだ。火力最大、爆弾設置数無制限のボンバーマンみたいなものだ。
私がやろうとしていることは、そういうことだ。
脱線させるのなんて簡単。凶器も狂気も不要だ。
それならば手は汚れない。私は壊れない。狂わない。歪まない。
私はその様を特等席で傍観していればいい。ただ、その後は社会的に死ぬだけだ。
一度、起爆した爆弾は止まらない。爆発が爆発を生み、また爆発が爆発を産む。いずれ私は逃げ場を失い、死んでいく。
私は、私自身が発生させた爆弾によって死ぬ。社会的に。あるいは物理的に。
悪くはない。生きる事に意味を求めるのが人間なら、死に対してもそう在るべきだ。
生きる事と死ぬ事が同義とは思わないけれど。すくなくともこの二つは似た者同士なのだから。
鏡面を挟んだように正反対なそっくりさんなのだから。1と0のようなものなのだから。──だから・・・。
自分によって死を得られるなら、死を手繰り寄せられるなら、私はぜんぜん本望である。
悪くない。けれど良くもない。望むけれど。願わない。・・・曖昧。朧げ。朦朧とした本心。
私はなぜ、人を殺そうと、しているのだっただろうか。
疑問が浮かぶ。──疑問が沈む。
最初のコメントを投稿しよう!