第5章~突然の不幸~

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不吉な黒猫の絵なんか 売れなかった それでもアンタはオレだけ描いた 「もうちょっとお前と 楽しみたかった」 と絵描きは泣いた 絵描きの頬にある涙の雫を 静かにオレはなめた しかし絵描きの体はしだいに 冷たくなっていくのがわかった 「ゴメンな。もう無理みたいだ」 オレは現実を 受けとりたくはなかった オレも泣き出してしまった 絵描きはオレの頭をなでて 「ありがとう」 と言って 静かに息をひきとった オレは死んでしまった 絵描きの横で鳴き続けた しかしオレには やらなくてはいけない 使命がある オレは鳴くのを止め 絵描きの手に握られている 手紙を口にくわえて 絵描きの家を飛び出した  
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