第2章~出会い~

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オレは一人で暮らしていくんだ! と心に決めていた 夜の闇にまぎれて街を 歩いていた 一人の男がこちらに向かって 歩いてくる その男の手にはスケッチブックが 握られていた カバンには筆やペン、鉛筆などが 顔を出していた どうやら絵描きらしい 絵描きはオレの前に しゃがみこんだ するとオレを抱き上げて 自分の顔あたりまで持ち上げ こう言った 「こんばんは、素敵なおチビさん 僕らよく似ている」と 絵描きも一人らしいのだ 見知らぬ人からの とっさの優しい言葉に驚き 絵描きの腕のなかでもがいて 噛み付き ツメをたて必死に引っ掻いた 顔にも腕にも傷がつく あまりの痛さに 絵描きはオレをはなした オレは孤独という名の逃げ道を 走った 走った 生まれて初めての 優しさが温もりが まだ信じられなくて どれだけ遠く走って逃げても 変わり者はずっとついてくる 変わり者の絵描きは 「どこへ行くんだい? 「何を食べているんだい?」 「どこに住んでるの?」 「何才なの?」 質問の嵐を受けた 変わり者はオレに 何度噛み付かれても 引っ掻かれても どこまでついてくる オレは疲れでその場に倒れた  
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