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でも、知らないフリをと、直感が告げている。
――怖い。
言ってしまったら。
聞いてしまったら。
おかしいもの。こんな気持ちは。
きっと、認められない。
「ま、器の違いっていうか?」
だから、ふざけて返して、ぱいなつぷる。
「まったまたー、お調子者なんだから」
崩したくない関係を、ぐりこでコツコツ、積み上げる。
「あっ!」
唐突に、君が声をあげた。
視線は窓の外。
その声音から、纏う空気から、自分の役目が終わったことを知る。
赤いランドセルはやっぱり仲間たちとは遅れていた。
「来た?」
「そうみたい」
はにかむ君のカオに、ぐりこが揺らぐ。
チラリと見遣ればアイツは小さく会釈して、それが『アナタなんて気にもかけていませんよ』と言うようで、奥歯をかみ締めていなければどうにかなってしまいそうだった。
右手の薬指の、君とお揃いの指輪がキラリと光って目に痛い。
「なら、ほら、早く行かないと」
沸き上がる嫉妬心を捩じ伏せるように、荷物をまとめる君に心にもない言葉をかける。
本心は『行かないで』と叫んでいた。
そんなこと、おくびにも出さないけれど。
素直にはなれない。
なったらいけない。
今まで築いてきたものは、あまりに高いから。
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