ぱいなつぷる×ぐりこ

11/13
前へ
/16ページ
次へ
  「ねぇ、髪の毛はねてない?」 「へーき」 「化粧は?」 「ばっちり」 「洋服変だったりしない?」 「そんな今さら」  そわそわと落ち着きのなくなった君から、質問ラッシュ。  くるくるに巻かれた髪も、好感度の高いナチュラルメイクも、乙女チックなワンピースも、問題はどこにもなかった。  それでも、君は手鏡を何度も見ながら不安げな顔。  君の中のアイツの存在の大きさを目の当たりにして、言いようのない寂しさを覚えた。  まるで、あの時のように。  自分はあれから全く成長出来ていないようだ。  君はどんどんと先に行っているというのにいつまでもグーばかりで、開いた距離では引き止めようと伸ばした手も届かない。  だから、せめて声だけでも、と。  少しでも自分へ意識を戻してほしくて――そんな子供のようなわがままから言っていた。 「大丈夫。可愛いよ」  少し熱っぽくなってしまったのは、間違いなく本心からの言葉だったから。  君は数回瞬いて、それからゆっくりと、破顔した。 「びぃっくりしたぁ! いきなり真面目に言うから」 「落ち着いた?」 「余計にドキドキしたかも」  君の口調は冗談を言う時のそれ。  けれど、その一言に自分の中の余裕は一瞬で霧散した。  ――気づいて。気づかないで。  そんな綱渡りのような不安定な気持ちがグラグラと揺れる。  頭の片隅ではアイツの会釈がフラッシュバックし、もう片隅ではぐりこを念仏のように唱えていた。  ありえるはずのない静寂が耳に痛い。  黙り込んだ自分を、君はどう思うだろうか。  目の前の君は、全ての動きを停止させ、 「ちょっと-、そんな引かなくてもいいじゃん」  傷ついた風を装った。その声に、呼び戻された周囲の音。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加