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「……は! うっかりトんでた」
「お・か・え・り」
「あー、ほらほら、怒らないでって。可愛い顔が台無し」
少しむくれたように言う君のおかげで、余裕も戻ってきた。
「誰のせいだと……」
「自滅でしょ?」
恨めしげな視線を受け止めて、自分の口から呆れ気味な笑いが零れた。
今日は翻弄されてばかりだ。
君の全てに。この想いに。
そう思うとどうしてか悔しい気分になって、気付いたら呟いていた。
「うそ」
今日は嘘ばかり言っているなと、ぼんやりと思う。
「え?」
訳が分からないという顔をする君の視線を、独占。
「怒った顔も可愛い」
そういえば、自分も生来負けず嫌いだった。
君とは昔から何でも張り合っていて。
「すごく――」
「すごく?」
そして君に勝てたことは一度もなかった。
――今だって、ほら。
一番に言いたい言葉は出て来ない。
言えやしないのだから。
臆病な自分には。
「なーんてね」
笑って誤魔化すしか。
「もー、真面目に聞いて損した-」
対して、君はいつでもストレート。
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