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「でもね、私はね、好きだよ。シロちゃん」
やっぱり、完敗だった。
その言葉に込められた意味は、正確には分からないけれど。
測れた距離に大きな間違いはないように思えた。
「知ってる」
君は鋭くて、賢いのだから。
「やっぱりシロちゃんだよね」
返せば、君は満足げに頷いて席を立つ。
「それじゃ、いってくるね。今日はありがとっ」
その手には、自分が貰ったものより一回り大きな小包と、丁寧にラッピングされた今日の目当ての品が大切そうに抱えられていて。
それを見て痛む胸を押さえることも出来ないままに、
「いってらっしゃい」
と。ただそのひと言を、絞り出すように言うしかなかった。
果たして、上手く笑えていただろうか。
「優しいのは、君にだけよ」
特別な、君にだけ。
胸は相変わらず痛くって。
数分前の君の言葉に静かに返して、吐き出せない想いを流し込むようにコーヒーを飲んだ。
――やっぱり苦い、味がした。
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