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「それにしてはよく出来てると思うけど?」
「それ実は二回目なの」
返した言葉に、また、自分の知らない君のカオ。
嫌だと思うと同時に、そのカオに癒されている自分も居る。
アイツが憎いと思うと同時に、羨んでいる自分も居る。
「一回目がもう最悪でね」
「うん」
なぜ、そんな風に笑うのだろう。
「爆発音がしたんだよ! オーブンの中で!」
「危なっ」
なぜ、自分だけを見てくれないのだろう。
「でしょ-。見てみたらやっぱり大惨事で」
「うん」
なぜ、君の隣に居るのはアイツなのだろう。
「開いたオーブン意味も無く閉じたからね!」
なぜ、こんなことになったのだろう。
「そもそもレシピもややこしくてさ」
「うん」
答えは、とうの昔に出ているはずなのに。
「でも、それにしたってどうして――」
なぜ。どうして。
ずっと近くに居たのは自分だったのに。
君とアイツとの仲を壊してしまいたい。
けれど、君の泣き顔は見たくない。
君が悲しむ顔は見たくない。
君が幸せそうにアイツと笑うカオも。
――気持ちが悪い。
自分が二人居るような錯覚。
グルグルと渦巻く感情に酔ってしまったのかもしれない。
もう、慣れたと思っていたのに。
「うん」
いつの間にか外の小学生が一人、仲間たちとだいぶ離れた後方に居た。
大きく張り上げられたジャンケンの掛け声がかすかに聞こえてきて、どうしてか、落ち着かない。
「うん」
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