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「ごめんね、買い物付き合わせちゃって」
君は申し訳なさそうに謝る。
「……でも、一人じゃどうしたらいいか分からなくて」
確かに朝からの買い物には、疲れていたのかもしれない。精神的に。
アイツへのプレゼント選びなんて、出来ることならしたくなかった。
それでも、君に頼られて『断る』という選択肢はない。
「そんなことない。むしろ久々に一緒に買い物出来て楽しかったし」
全部が全部、嘘ではない。
君との買い物は楽しかった。
だから、そんな顔はしないで欲しい。
そうさせたのは自分だというのに、ひどく勝手な思いが湧く。
けれど、自分の知らない君のカオを見るのも嫌だということは事実だ。
本当に、勝手だと思う。
自分がどうしたいのかが分からない。
いっそのこと真に自分本位になれればどんなに楽だろうか。
「無理してない?」
「――っ」
そんなことを考えていたせいか、君の一言に必要以上に動揺した。まるでこの気持ちに対する質問のように思えて。
さっきとは別の意味で息が詰まり、あんなにバクバクとしていた心臓も止まりかけた気がした。
――正直なところ、無理はしていると思う。
一度は決着をつけたはずだ。
特別な関係じゃなくとも、君のそばに居ることが出来るだけで幸せじゃないかと。
最近は慣れたとさえ思っていた。
制御し難い感情の板挟みに。
けれどそれは単なる思い込みでしかなく、少しでも気を抜けば飲み込まれてしまいそうだった。
今だって、知られてはいけないと、自分で設けた制限をも軽々と越えて外へ流れ出してしまいそうになっている。
――君は、鋭いのに。
咄嗟に返すことが出来ず、視線はあちらこちらをさまよう。
そんな中で捉えた君の顔。眉はまだ八の字をかいたまま。
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