ぱいなつぷる×ぐりこ

8/13
前へ
/16ページ
次へ
  「シロちゃんはいっつも優しかった」 「まるで今は優しくないみたいに聞こえる」 「昔っからずっと優しいなってこと。かくれんぼもそうだった」 「かくれんぼ?」  赤いランドセルはさっきからしばらく進んでいない。  焦っているのか、小刻みな足踏みが止まらないでいる。 「私、隠れるの得意でさ、誰も見つけられなかったじゃない?」 「あ! 最終的にみんな諦めて帰っちゃったやつか!」 「そう! それ! でもシロちゃんだけは残ってちゃんと見つけてくれた!」 「あれは相当苦労したんだからね。どこ探してもいないし、日は暮れて真っ暗になるし、やっと見つけたと思ったら泣き出すし」  クスクスと笑いあう。  知っている君の顔。そう、確かに知っていた。 「だって寂しかったんだもん! シロちゃん見たら安心して……」 「だったら自分から出て来いって-。も-、ホント負けず嫌いは困るっ!」 「シロちゃんだって私を見つけた時、絵に描いたようなホッとした顔してたくせにぃ」  ずっと一緒に成長してきて、お互いのことなら何でも知っていた。  好きも嫌いも、食べ物や芸能人、動物や色、歌や行動まで、とにかく何でも。 「そりゃ何時間も探して見つからなかったら不安にもなるっつーの!」  ――あの時までは。  自分の中で君はどんどん特別な存在になっていって、もちろん君の中でもそうであるはずだと思い込んでいた心に、小さな穴が開いた、あの時までは。 『あのね、シロちゃん』  君は言った。 『どした?』  返した自分の声も口調も、更に言うなら君が相談してくる調子も表情も全てがいつも通り。  それがいつも通りの君との関係に、いつもと違う要素を割り込ませる話だと、どうして想像がついただろうか。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加