ぱいなつぷる×ぐりこ

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『好きな人がね、出来たの』  自分の知らない幸せそうなカオで話す君の、どうして邪魔が出来ただろうか。  本当は引き止めたかった。  アイツの良くない噂でもなんでもをでっちあげて。  離れていかないでと、縋り付いて。  でも、そんな時に限って感情も頭も落ち着き払っていた。  君に嫌われないようにということだけを考えて、臆病に。 「でも、なんでそんなずっと探してくれたの? 帰っちゃおうとか、思わなかったの?」 「んー……誰かさんは見つかるまで絶対出て来ないって確信してたからね」 「さすがシロちゃん」 「伊達にいつも一緒にいたわけじゃないさ」  自分の一番近くに居るのは間違いなく君で。  君に一番近い人物は自分だと信じて疑わなかった。  滑稽な一方通行。本当に、君だけを見ていた。  君しか、見えなかった。 「距離、開いちゃったね」  ぼうっと、外を眺めながら考えも無しに口にして、きっと笑っていたと思う。 「早く追いつけるといいね」  こんなにもドロドロとした想いを秘めていたのに、君が、ガラス越しの小学生のことを言ったから。  それとも、自分は隠し事が上手くなったのかもしれない。  そうでなくてはいつまで隠し通していられるか。想いは、常に膨らんでいく。 「……シロちゃんはさ、いっつも優しい」  今頃になって言い直した意図が分からずに君を見ると、大きくてクリクリとした瞳に、自分が映りこんでいた。  アイツしか見えていないものだと思っていたのに。  ひどく緊張する。  何かを見透かされているような気もしなくはない。
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