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しかし、思い出せるのはそこ迄。
自分がどこで、どうやって生きていたのか、いくつだったのか、親はいたのか、友達はいたのか、どんな人間だったのか。
何ひとつ思い出せなかった。
「ということはミシェル、僕は今迄生きて自分の人生を全うしたけど、その今迄の人生は後世であり、僕はこれから来世という名の別の人生を歩むんだね。」
僕がそう聞いたが、ミシェルは前を向いて返事をしない。
聞こえている筈ではあるが、何か考えている様だった。
「そういうことになるわね。但し、来世を過ごす際、あなたは人間として過ごせるか、まだ分からないのよ。しかも人間で過ごせたとして、今の残り少ない記憶は残らず抹消されるわ。」
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