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「……つまり、僕は人間である今の自分を忘れ、犬とか鳥として生きるということ?」
「可能性の話よ。だけど他の生き物になったら、自分のことを忘れるなんてものじゃないわ。自分が人間だったなんて、思いつきもしないわよ。」
「それも少し寂しいけど、まあ今だって自分の顔しか覚えてないし。まあ来世の僕が楽しんで生きてくれれば、それで良いや。どうせ前世の僕なんて何一つ覚えていないから。」
するとミシェルは、僕が入った鳥籠を目の高さ迄持ち上げ、切なそうに僕を真っ直ぐに見つめていた。
「……なんだよ、そんな顔をして。」
「あなたって、呑気ね。人の気もしらないで。」
何というか、珍しく様子がおかしかったが、僕にはミシェルがどんな言葉を欲しがっているのか分からなかった。
僕が人間じゃなくなることに同情でもしてくれているのか?
それともこんな薄情な人間に切なくなっているのか?
相変わらず、人魚の考えは分からないな。
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