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パレスの門の前にいるっていうのに、門からパレス迄、ユニコーンの動かすソリで行くってあんた、それは何の冗談だい?
なんて思わないこともなかったが、僕はあのソリに乗れるなら何も言うまいと心に誓って、ミシェルと執事に続いてソリに乗り込んだ。
するとユニコーンとそれに続く真っ白のソリは門からパレスへ向かって進む。
無音で走るソリが風をきって気持ち良かった。
門は勿論自動開閉。
5分程でパレスが近づいてくる。
それにしても随分とパレスの目の前にとめるんだな
と思ったが、パレスの正面扉は開く気配を見せない。
ソリはどんどん前へ進む。
しかし速度をゆるめる気配はない。
執事はソリを止める命令を出さないのだろうか。
「あの、ぶつかります。そろそろ止まった方が良いのでは。」執事は返事をしない。
無視か。良い度胸だ。
仕方がないのでミシェルに同じ様な事を言うと、ミシェルに迄無視された。
「……。」
何なんだ、天国に来てまで、周りの冷たさに涙するなんてあまりにも僕は惨めだ。
しかし流石に近すぎる。
そろそろ止まらないと本当にぶつかる。
僕はうろたえる。
「え、ちょ、ちょっと待って。本当、ぶつかるって!ちょっと!聞いてんの!」
前に座る執事の肩に手をかけるが、その手を払われた。
扉との距離はあと数メートル。本当にもう駄目だと思った。死んだ僕がもう一度死ぬなんて、これはもしかしたら良いジョークのネタになるかもなんて、どうしようもない事を頭に浮かべ、体を固くして、目をきつくとじる。
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