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魂だとぶつかる衝撃がなくなるのか?と思い目を開けると、ソリは扉やパレスの広い廊下のランプ、食堂のテーブル、ホールのテーブル、階段、全てをすり通り抜けて走っていた。音もたてずに。何も壊さずに。
透けてみえこそしないものの、そこにあるパレスはリアルな3D映像の偽物の様だった。
「……蜃気楼?」
唖然とした僕の独り言にミシェルが答える。
「違うわ。このユニコーンはどこでも通れる。彼らがひくソリ、それに乗る人も同様にね。もう少し面白い反応を期待していたのだけれど、何よ、クールでも気取っているの。」
不思議な感覚に放心するあまり反応のない僕をよそ目にミシェルは執事に尋ねる。
「そういえば、あの嫌味な天使は相変わらずかしら。」
「ええ、しかし本日はミシェル様がお見えになるという知らせを聞かれて、機嫌が良さそうでございました。」
「あら、それは光栄ね。私も楽しみにしているわ。あなたも色々と大変ね。」
ミシェルがそう言うと執事は、ははは、そうですね、と口を開けて笑っていた。
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