Ⅱ:蒼き竜

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レオンは長剣を片手で器用に回転させると、柄を上に持ち、刃を地面に向けた。 「……『照らし、導け』」 レオンの声に呼応するかのように、柄の石がにわかに眩しいほどの光を放ち始める。 光はすぐに壁の端から端を明るく照らすまでになった。 魔術の中では基礎の基礎『灯り』の魔術。 魔術を行使するためには『呪文』の詠唱が不可欠で、呪文を唱えない限りどんなに高位の魔術師であっても魔術を行使することは出来ない。 呪文の言葉の一つ一つが鍵となり、自身の内にある魔力と呼ばれる一種の精神エネルギーを整形し魔術が繰り出される。 呪文は行使する魔術の難易度が上がるにつれて長くなっていき、一文字でも間違えれば失敗。 また、自分の実力を遥かに越えた魔術は例え呪文を完璧に詠唱できたとしても魔術に魔力全てを吸い取られ自分が『枯れる』危険もある。 魔力の量は個々人の才能によるところが大きく、それが魔術師や魔導騎士への門をより狭くしていた。 「『灯り』がどこまで持つか……」 急がなければ。 レオンは半ば幻のような思いを胸に懸命に歩を進めた。
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