Ⅱ:蒼き竜

5/12
前へ
/137ページ
次へ
洞窟はほぼ一本道だった。 壁に所々、人が一人通れるぐらいの穴が空いていたが、今のレオンにこの洞窟の全てを把握する時間はない。 少しずつではあるが呼吸が苦しくなってきている。 『灯り』により体内の魔力が消費されているのだ。 無から有は作りだせない。 魔力が底をつけば後は『枯れる』のを待つだけだ。 「死にたければ絶対『枯れる』な」 魔術を学ぶ者が最初に覚える言葉。 実際に『枯れる』ところを見る者は決して多くない。 大多数は実態を知らぬまま人生を全うし、死に至る。 レオンも見たことは無かった。 「……最悪、無茶してみる……ってのも」 良いかもしれない。 冗談とも本気ともつかないことを吐き、思いながらレオンは奥へと進んだ。 緩やかにカーブしているらしく、後ろを振り返っても広がるのは闇ばかり。 今や『灯り』だけが唯一の光だった。
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!

118人が本棚に入れています
本棚に追加