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「誰だっ! 姿を見せろ!」
レオンは声を張り上げた。
それに応えるように再び声が響く。
「何だ、元気そうではないか。『匂い』の割に迷っているから弱り切っているものとばかり思っていた」
どうやら、声の主はレオンが洞窟に足を踏み入れてからずっとレオンを監視していたらしい。
一体何者なのか、そもそも人であるのかすら怪しい声。
今のところ敵意は感じられないが、いつ、どこから襲いかかられるかわからない。
「……何者か答えろ!」
レオンの叫びは広場を反響し、ぶつかり合って虚空に消えた。
沈黙の後に返ってきたのは笑い声だった。
「よもや! 久しぶりの人間がこれとはな! 私も堕ちたものだ」
姿の見えない相手からの明らかな嘲笑はレオンの神経を容赦なく逆撫でする。
「何が言いたい!」
苛立ちは尽きた体力を限界を越えて消耗させる。
ましてや、神経を張りつめている今、その負担は尋常なものではない。
ふと、体の力が抜け、地面に倒れてしまいそうな錯覚に陥った。
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