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「……ここには二種類の人間が来る」
レオンは、何か、声の質のようなものが変化したような印象を受けた。
はっきりとはしないが、確かに変化している。
「それなりの魔力と技術を持つ『竜殺し』共と、それなりの魔力と運……悪運を持った、ただの人間」
やがてレオンは何が変化しているかを理解した。
声が収束し始めている。
今まで曖昧だった声の源が急速に形を持ち始めていた。
ある一点、杯の中心に。
「そのどちらも行き着く先は同じ……」
杯の縁に並ぶ鳥の一羽が姿を消し、一拍遅れて他の鳥が一斉に飛び立つ。
羽ばたきの喧騒の中に、生々しい音が一瞬混じる。
折れ、千切られ、滴る音が。
音がやみ、杯から何かが立ち上がった。
人の形をした何かが。
水色の髪を揺らし、レオン見下ろす『それ』は口の端から赤く一筋垂らしながら、にこやかに微笑んだ。
「食料だ、人間」
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