Ⅰ:旅の終わり

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王都ミューレの遥か西、広大に広がる『竜の巣』と呼ばれる密林に一人の青年の姿があった。 淀んだ風が青年の肌を撫で、力無く垂れた金色の髪を揺らす。 身にまとう鎧は過度な装飾のない、かといって雑兵にはない気品を漂わせており一目で名工による一品だと知れる代物だったが、疲労の色を見せる青年は少々、役不足が否めない。 既に数時間この密林をさまよった青年の足元ははっきりとせず、当然、進む道もふらふらとはっきりしなかった。 肩を荒く上下させ、牛のような歩みで進む青年だったが、その朱色の瞳には強い意志があった。 満身創痍であるはずの青年がそこまでしてこの密林をさまよう理由。 それはこの密林が『竜の巣』と呼ばれていることと密接な関わりがあった。 竜。 その昔、この地を統べていたとされる魔物である。 他の追随を許さない圧倒的な力をもった竜は、人を含むあらゆる動植物、魔物の頂点に君臨していた。 そんな竜をどうにかしようと、青年は思い立った。 言うだけなら滑稽な話で済むものだったが青年は宣言通りそれを実行に移し、遂にここまでやってきたのだった。 その青年は名を「レオン」といった。
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