Ⅰ:旅の終わり

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「『竜の巣』の奥深く、竜でさえ近づかない場所に蒼き竜がいる」 蒼き竜。またの名を『サイレント・ドラゴン』。 かつてこの地を支配し、後に東の大都市『ヒュッテルハイデン』の『竜殺しの業』によって西の端に追いやられた竜の中でも最も強い力を持ち、人々に畏怖の念を抱かせた。 長年、人々の前に姿を現し『竜殺しの業』を退け続けていたが、ある時ぱったりと消息が途絶え、それ以降五百年、奴の姿を見た者はいない。 そんな竜が『竜の巣』にいる。 当然といえば当然、風の噂ではあったが、元はと云えば既に親子の間で伝わる物語の中の空想上の存在と化していたものが生きているというのだ。 「これしかない」とレオンは思った。 『竜殺しの業』確立以降大きく変わった竜と人の関係。 それは一部では逆転し、対等になった。 空を自由に飛び、恐るべき力を持った竜を兵器として用いるのにさして時間はかからなかった。 『竜騎兵隊』 竜に跨り、圧倒的な力で敵を制圧するその姿を人々は『ドラゴンライダー』と呼び、敬った。
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