Ⅰ:旅の終わり

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「……やっぱり、無いのか……」 レオンの体力はすでに限界をとうに越え、代わりに体を動かしていた気力でさえ尽きようとしていた。 元々が風の噂、信憑性は皆無だ。 「……くそっ」 もはや、戻る体力も道標も残されてはいない。 ここまで幸運にも、竜に遭うことはなかった。 しかしその幸運もここまで、蒼き竜を実在させるところまではその効果を及ぼさなかったのか。 レオンの眼前は行き止まりにしか見えない。 蔦が幾重にも絡みつき、岩壁を緑に染めていた。 昇るという選択肢は論外だ。 左右どちらかに進み続ければ、いずれ回り道があるかもしれないが、そんなことをしている余裕はなかった。 「ここまで、か……」 レオンはよろよろと岩壁に近づき、足元のぬかるみに足をとられた。 緑が視界を埋め尽くす。 立ちはだかる死の予感にレオンは心のどこかで喜んでいた。
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