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「……やっぱり、無いのか……」
レオンの体力はすでに限界をとうに越え、代わりに体を動かしていた気力でさえ尽きようとしていた。
元々が風の噂、信憑性は皆無だ。
「……くそっ」
もはや、戻る体力も道標も残されてはいない。
ここまで幸運にも、竜に遭うことはなかった。
しかしその幸運もここまで、蒼き竜を実在させるところまではその効果を及ぼさなかったのか。
レオンの眼前は行き止まりにしか見えない。
蔦が幾重にも絡みつき、岩壁を緑に染めていた。
昇るという選択肢は論外だ。
左右どちらかに進み続ければ、いずれ回り道があるかもしれないが、そんなことをしている余裕はなかった。
「ここまで、か……」
レオンはよろよろと岩壁に近づき、足元のぬかるみに足をとられた。
緑が視界を埋め尽くす。
立ちはだかる死の予感にレオンは心のどこかで喜んでいた。
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