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短めの少し跳ねた黒髪に、全てを吸い込むかのような今は閉じられた黒い瞳、そして何よりその整った顔立ちを見つめながら、私は…
「気絶している人間をそんなに見つめてやるな、アリシア殿」
「ふぇ!?」
私は急に聞こえた聞き覚えのない男性の声に、素っ頓狂な声を上げてしまい、思わず辺りを見渡す。
すると、私に存在をアピールするようにゼノンの手元から声が掛かった。
「ここだ、ここ。マスター…ゼノンの手に握られている、魔武器だ。」
「あ、魔武器さんでしたか…」
その言葉に私は若干赤面しつつ、答える。
すると、魔武器さんは少し柔らかい声で私に自己紹介を始めた。
「私はマスター…ゼノン・シュナイダーの魔武器で、名を“カトラス”という。マスター共々、よろしく頼む」
「これはご丁寧に…。私はアリシア・ヘイヴンといいます。此方こそよろしくお願いしますね」
その言葉に、カトラスさんは「うむ」と頷き(実際は魔武器なのでわからないが…)、言葉を続ける。
「すまんな、転入早々手を煩わせてしまって…」
「いえ、そんな…。気にしないでください」
私が、そう言って微笑むと、カトラスさんは「そうか、感謝する」と言って、黙り込んでしまった。
沈黙の空気に耐え切れなくなりかけた頃、後からアリサの声がかかった。
「アリシアー!ゼノンくんの治療終わったぁ?」
「あ、はい。今終わりました」
その言葉に私は頷き、アリサの方へ視線を向ける。
「終わったなら、ゼノンくんを修練場の端に寄せてくれってカミヤ先生が言ってたよ」
「わかりました」
そう答えて、ゼノンを運ぼうと視線を向けると、そこには既にゼノンを背負ったレオンくんがいた。
「転入生は重いだろうから、オレが運ぶわ」
ニカッとレオンくんが笑ってそう言うと、私は「お願いします」と返し、ゼノンを背負ったレオンくんとアリサと共に修練場の端の方へ歩いて行った。
SIDEアリシア・ヘイヴン END
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