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郷愁
埃の舞うホームに定期券ひとつポケットにいれて
私はいつもの電車を待っている
人の波は駅のホームに溢れて
電車に吸い込まれてはまた溢れていく
そうして繰り返されていく
誰もが帰り人であることの世情
乗り換えの案内板に
故郷行きの時刻表が見える
春夏秋冬とたどり着けなかった
あの故郷行きのホームへ向かう人よ
あれは故郷への帰り人かも知れないと
私はなんども振り返り見る
故郷の駅舎では
今でも迎え人がきますか
あの秋の七草枯れた小道を
今でもかけて来ますか
素知らぬ街は他人の街、
人の群れに何度問いかけても応えはない
今夜もいつもの電車に乗る
窓の外ではよそよそしさと懐かしさを滲ませて
明かりのともる家並みが通り過ぎていく
誰もが帰り人からはぐれた最終では
淋しさだけが乗り合わせていくばかり
あの人は今頃帰りついているだろうか
迎え人のもとへ
あした、故郷へ帰る人はいますか
作 夏休み
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