『蒼氓』―タクシー編―

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    ―『AM3:15』― 男のタクシー業務は、常に不規則な仕事である…。 深夜→朝→夕方だったりと、その不規則な仕事でも男は、タクシー業務が好きだった…。 男にとって、この時間帯の客は、一癖も二癖もある客が乗ってくるのだ…。 男が、そんな事を考えながらタクシーを走らせていると…。 早朝深夜には、かなりのエロスをムンムンとさせた女性客が、タクシーを止めた。  (ブロロ…ロ…キィーィー) 男のタクシーは、そのエロイ女性客の前に停めた…。 そして、そのマブい女は、視覚的に露出の激しい服と嗅覚的に甘いイイ香りを放っていた…。 すると、女が言った…。 「あの~〇〇まで、行ってくださらない」 男は、その甘い声すらとてつもなくたまらなかった…。 何故なら、密室という狭い車内に女の匂いとルームミラー越しの女の色気が、この時間帯の男を惑わせる…。 (くうゥ…なんてイイ女なんだ…仕事中じゃなきゃ飛びつきたいィ♪) 男は、そんな妄想をしていると…。 女が、一瞬!足を組みかえたのだ! 男は、その一瞬すら見逃さなかった! 男にとって、この時間帯は幸福感でいっぱいだった。 そして、男の楽しい時は、あっという間過ぎ去っていった…。 「ここで、よろしいですわ、お幾らになります?」 男は、残念な気持ちを抑え…言った…。 「えェ~と、4126円になります」 そう言う…と…女は、乗車賃金を支払うと暗いマンション街へと消えて行った…。 男は、そんな闇の中を見つめて言った…。 「あァ…イイ女だったなァ…」 そして、男は名残惜しい気持ちを抑え…空腹を満たす為にコンビニへとタクシーを向かわせた…。 コンビニへと着くと男は、おにぎりとお茶とエロ本を購入した。 そして、エロ本を眺めながら、おにぎりをほうばり思った…。 「最近の女は、エロさが、凄いなァ…こんなにカワイイ顔して大胆やでェ♪」 男は、エロ本を食い入るように見てつぶやく…。 「俺の時代の昭和の女なんか、たいした事ないのによォ~」 男は、平成の女と昭和の女を天秤に掛けるのが、男の楽しみなのだ。 そして、男はエロ本を満喫してタクシー業務へと戻った…。 タクシーは走り出す…次に乗ってくる…客が男を混沌へと導く事を知らずに…。
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