怪盗の末裔

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   1 「わたしは怪盗の末裔です」  高校の入学式で、自己紹介というごくあたりまえなことをやっているときのことだった。  怪盗? あくび交じりに聞いていた俺は耳を疑い、あわてて声の主を見た。俺だけでなく、おそらく全員が注目したに違いない。  となり席の女子が鼻を高くしている。ぺったんこな胸を反らせ、きゃしゃな腰に両手を当てながら。  ワッと爆笑が起きた。見るからにガリ勉で笑いそうにないやつまで笑っている。虚を衝かれたせいで、俺は笑えなかったが。 「ははは、つかみはナイスだぞ」  担任教師までもが笑い、賞賛の言葉を与えていた。  ところが、その女子は不服そうな表情だった。なにも言わず席に着き、片手で頬杖をついている。  こいつ、まさか本当に怪盗の末裔なのか? 俺はそんな疑問を抱いていた。気づいたのはたぶん、俺だけだ。みなが笑う中で、唯一笑い損ねた俺だけが。
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