怪盗の末裔

3/7
157人が本棚に入れています
本棚に追加
/372ページ
   2  入学式は昼前に終わるのが一般的である。ここも例に漏れずそうだった。  ぞろぞろと生徒たちが帰っていく中、俺はある女子に声をかけていた。 「なあ、さっきの自己紹介のやつってさ、ホントなの?」  その女子は腰をあげようとするのをやめて座り直し、俺に体を向けた。黒い髪に東洋系の顔立ちなのに、瞳が青いため、不思議な印象を与える。凝視すると、吸いこまれそうになった。 「本当よ。でも、どうせあんたもバカにしてるんでしょ」  張りのある声で答え、訝しげに俺を見る。  そりゃそうだろ。怪盗の末裔だなんて言われて信じるやつなどまあいない。だが、そう言ってしまえば、ここで会話は終わる。俺は話を膨らませることにした。 「うーん、先祖の名前によっては信じるかも」 「アルセーヌ・ルパン」  吹いた。机をバンバン叩いてしまった。
/372ページ

最初のコメントを投稿しよう!