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入学式は昼前に終わるのが一般的である。ここも例に漏れずそうだった。
ぞろぞろと生徒たちが帰っていく中、俺はある女子に声をかけていた。
「なあ、さっきの自己紹介のやつってさ、ホントなの?」
その女子は腰をあげようとするのをやめて座り直し、俺に体を向けた。黒い髪に東洋系の顔立ちなのに、瞳が青いため、不思議な印象を与える。凝視すると、吸いこまれそうになった。
「本当よ。でも、どうせあんたもバカにしてるんでしょ」
張りのある声で答え、訝しげに俺を見る。
そりゃそうだろ。怪盗の末裔だなんて言われて信じるやつなどまあいない。だが、そう言ってしまえば、ここで会話は終わる。俺は話を膨らませることにした。
「うーん、先祖の名前によっては信じるかも」
「アルセーヌ・ルパン」
吹いた。机をバンバン叩いてしまった。
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